イケメンなんか大嫌い

暫し立ち尽くした後、やっぱり口元を隠して、やっとのことでアスファルトを踏み出した。
我ながら、腰が抜けたような情けない歩き方だと思った。

「未麻ちゃん」

背後から声を掛けられ、心臓が飛び上がる。
振り向くと、喪服に身を包んだ叔母さんの瑠実(るみ)ちゃんが、にこやかに手を挙げた。

「瑠実ちゃん、おはよう。叔父さんは?」
「おはよう。車止めてるとこやねん」

平静を装うが、先程の俊弥とのやり取りを見られていないか気が気でなかった。

瑠実ちゃんは叔父さんが関西勤務だった頃に出会った、生粋の関西人だ。
ふたりは歳が離れているので、義理の叔母さんと言ってもまだ30代と若い。
すると瑠実ちゃんが声のトーンを落として、楽しそうにほくそ笑んだ。

「未麻ちゃん、見たで……めっちゃイケメンの彼氏と歩いとったやろ?」
「……えっ!? いやっ……あれは彼氏っていうか……」

キスシーンを見られていないか心配のあまり、咄嗟に適当な説明が出てこなかった。
うろたえて可笑しな表情で、掌を振ってしまう。

「えぇ? こんな土曜日の朝っぱらから一緒に歩いとって彼氏とちゃうって……じゃあ何? セフレ?」

瑠実ちゃんの歯に衣着せぬ物言いに、まだ口の中に残っていた飴を喉に詰まらせそうになり、咳き込む。

「えぇー……やるなぁー……」

口元に手を添えた訝しい表情に、取り付く島もないままに動揺を顕にしてしまう。

「いやぁ……えっとぉ……彼氏……かな……?」
「なんや、やっぱり彼氏なんやん」

仕方なしに肯定を示すと、それ以上は追求しないでくれたので、ようやく胸を撫で下ろした。

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