イケメンなんか大嫌い

言われてみればそうかも知れないと、目を丸くした。
意外と人をしっかりと見ている彼自身にも。

にこっと柔らかく微笑んで、作業に戻って行った堂島くんとは対照的に、わたしは固まったまま動き出せなかった。


そっか、わたし……俊弥のこと信じてないんだ……。


思い至った自分の本心に衝撃を受け、胸の音のボリュームが増し、荒ぶり始めた。
手元の書類を目に映したまま、騒々しい周囲の話し声や電話のコール音が遠のいて行く。

「…………」

仕事に戻らなければいけないと、突き止めた思惑は、ひとまず飲み込んだ。


それからは、仕事中は俊弥のことを忘れるよう、意識して努めた。
最低限、何はなくとも毎日を、仕事をきちんとこなさなければ過ごして行けない。
それに、正直言って仕事に没頭している方が楽だった。


金曜日の勤務を終え、特に予定もないけれど、少しほぐれた緊張を感じつつ駅へと向かう。
15分程歩けば、大きなターミナル駅に出られるので、いつも利用している。

橋に差し掛かると、白い息が流れて行く。
渡り終えると、眼前に真新しいスタイリッシュな建物が迫って来る。
数年前から駅前の大規模な商業開発を行っており、日の落ちた空に、印象的な屋根の形を浮かび上がらせていた。

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