イケメンなんか大嫌い
1時間の残業を終え、朝食のパンを購入し帰路に着いた。
角を曲がると、アパートの前に人が佇んでいる。
振り向いた顔を認識して、目を見張った。
「遅せぇ」
「……なんで?」
こいつが此処に居る!?
「詫び入れるっつったろ」
「……? 要らないよ、あんた関係ないじゃん。それよりなんで此処……」
怪訝な表情で返すと、にやりと不敵な笑みを浮かべつつ言い放つ。
「おばさん変わんねぇな、整った男子に弱かったよね昔から」
「自分で言うなっ! お母さんに何した!?」
「何も? 未麻が一人暮らしなんて心配ですね、って言ってたら住所教えてくれたけど」
簡単に信用しないでお母さんー!
思わず口をぽかんと開けたまま心の声で叫んでいると、大きな手が伸びて来て、びくっと心臓が跳ねた。
「良いから来いよ。どうせ月曜から飯の準備してねぇだろ?」
うぐ、その通りだけど……怯んだ隙にパン屋の紙袋を奪って行った、一瞬触れた指先が酷く冷たかった。
えっ……まさか、結構な時間此処に……?
困惑しているわたしを無視してさっさと歩き出した俊弥の後姿を見上げる。
……いや、ないない。元から手が冷たいんだ、きっと。
動揺し始めた心に気付かない振りをして、不本意ながらもないがしろに出来ず後に続いた。