イケメンなんか大嫌い
「え? ……牛丼」
調味料を思い浮かべていると、不意に疑問を投げられて咄嗟に口を突いて出てしまった。
……また色気ないとか、からかわれる!?
『何屋の?』
「……作ってんの、自分で」
一瞬身構えたが、自分の返答に若干照れ臭さを覚え、ふとこの状況に疑問を抱く。
賢司くんとだってメッセージのやり取りすらしていないこの頃、何故俊弥と電話で今晩のメニューの確認なぞしているのか?
『へぇ、今? それで音が聞こえんだ』
柔らかく響いた、微かに鼻に掛かったようなその声に、心臓が小さく跳ねた。
具材の焼ける音が、耳の奥に吸い込まれて行く。
「……はっ! 焦げる!」
何故だかぼうっと空を眺め、手元の動きが止まっていた。
我に返って、慌ててコンロの火を緩める。
『俺も牛丼にしよ。じゃあな、失敗すんなよ』
楽しそうな声が聞こえたかと思うと、呆気なく通話が切れ音が消えた。
「……何の電話だっけ?」
独りごちながら、その場にしゃがみ込みたい衝動に駆られていた。