イケメンなんか大嫌い

彼女は徐々に歩く速度を落として、皆を遠ざけた。

「……愛唯ちゃん、どうしたの?」
「未麻ちゃん」

声を掛けると、愛唯ちゃんのスニーカーがアスファルトと擦れ合い、じゃりっと音を立てた。
その場に立ち止まり、眉根を寄せわたしをじっと見上げる。

「俊弥は彼女居ないからね」

意表を突かれて、目を見開いたまま言葉を失ってしまう。

「……え? ……何の話?」

乱した心を誤魔化すように苦笑いを浮かべたけれど、愛唯ちゃんは真剣な表情のまま目を逸らさず、自分の鼓動だけが音量を上げ、ビリビリと体を震わすようだった。

「意地張ってると後悔するかもよ」
「……愛唯ちゃん、何か勘違いしてない? わたしと俊弥は何でも……」

精一杯絞り出して告げると、わたしの袖を掴んだままの手に力が籠った。
視線を落とし、切なげな表情を見せる。

「……ごめんね。昔、あたしが俊弥のこと取っちゃったから。本当は何となく、未麻ちゃんの気持ち気付いてたんだけど。ふたりだけで呼び捨てし合ってたから嫉妬してた」
「……」

ドクンドクンと響く、心臓の音があまりにうるさくて、周囲の音が遠のいて行く。

「……でも、言わないと伝わらないんだよね」

苦しそうに顔を歪めながらもわたしと目を合わせ、愛唯ちゃんの口元が僅かに弧を描いた。

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