イケメンなんか大嫌い

「入れるって」

前方から届いた俊弥の声に、現実に引き戻された。
気もそぞろなままに、どうにか皆に付いて歩いて来たらしく、居酒屋の扉から漏れる灯りに照らされている。
土曜日の宵の口と盛り上がる時間帯に7名と若干多めの人数ながら、都会ではないため運良く席が空いていたようだ。

掘り炬燵に通され、テーブルに並べられたメニューが目に入ったところで、気を引き締め背筋を伸ばした。
いけない、わたしは幹事なんだった。一次会が無事に成功したとはいえ、まだ同窓会は終わってはいない。

「皆、此処は飲み放付けなくて良いのかな? 付ける?」

気を取り直して、全体に向けて笑顔を作った。

「どーする~? 女子はあんま飲まないんかな~?」

津村くんの能天気な声で、和やかなムードが漂ったようでホッとした。

じきに注文したドリンクが揃い、本日2度目の乾杯をする。
既に同窓会という格式ばった様相は無く、砕けた雰囲気で普段の飲み会と変わりない。
わたしは意識して皆が笑うタイミングに合わせ、大袈裟に笑った。
気を抜くと、先程の愛唯ちゃんの言葉に引き摺られ、不安に飲み込まれてしまいそうに思えた。

『あたしが俊弥のこと取っちゃったから。本当は未麻ちゃんの気持ち気付いてたんだけど』

脳裏にエコーのように響く愛唯ちゃんの声を掻き消そうと、気を配った。

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