イケメンなんか大嫌い
帰宅し、楽しい明日を迎える為に鍋で野菜を煮込んでいる間に、今日の夕食用に簡単な炒め物を作ることにした。
冷蔵庫を覗き込みながら不意に、何だか昨日から料理ばかり作っているという事実にやや驚く。
「…………現実逃避……?」
ぽつりと呟き、しばし立ち尽くす。
鍋の中身がぐつぐつと音を立て、耳の奥にこだまする。
その場で眉を寄せ、瞼をきつく瞑った。
瞼の裏に浮かび上がったのは、賢司くんでは無く、俊弥。
──本当はわかっていたけれど、見ないようにしていた。
忙しなく動いていないと、心の渦に飲み込まれそうに思えたから。
だって、あいつとどうやって向き合えば良いのかわからない。
戸惑っている隙に、するりとわたしの心に入り込んで、居座らないで欲しい。
そっと瞼を上げると、流し台の上の蛍光灯が眩しい。
目を細めたのは、明る過ぎる光が痛かったのか、胸が痛かったのか。
目線を逸らし嘆息を漏らしながら、もう一度冷蔵庫を開き白菜を手に取った。
包丁で適当にざく切りする手元が映り込む。
やっとわたしは、わたしの恋愛を築いたと思っていたのに。
賢司くんを、好きだと感じていなかったわけじゃない。
こんなわたしと一緒に居てくれて、笑ってくれて……。
あんな優しい人を、裏切るの?
のろのろと手の動きが止まり、思い至った。