イケメンなんか大嫌い

……あぁ、そうか。わたしやっぱり、怖いのか。梨花の言う通りだ。
何考えてるかわかんないし、暴言吐かれるし、掌返されそうな気がするし。
また俊弥が何かしらの動きを見せるんじゃないかって、気が気じゃなくて……。

不安で堪らないんだ……。

何処を見るでもなく鍋の煮える音を耳に入れながら、しばらく動けずにいた。


火曜日、漸く賢司くんと会える日。
なのに表情は晴れないままに、業務を開始する。

俊弥から新規申込のメールが入っており、僅かに心臓が高鳴った。
しかし申込書の内容は一切の隙なく完璧で、住所も工数も何の問題もなく、簡単に日程を押さえられてしまった。
後はメールで結果報告をするだけで、電話連絡の必要性はない。
頭を抱え難しい顔をしている自分に疑問を持ち、目を見開いた。

……話したかったの? 俊弥と?

自分が何かを期待しているようで、胸の辺りがざわついた。
仮に用事があったからと言って、何を話して良いのかわからないくせに。

完璧な書類を手に眺めると、ふと昔の映像が目の奥にフラッシュバックした。
勉強でもスポーツでも抜群の出来映えを披露し、皆を唸らせていた俊弥。
わたしの前でだけ、素の毒気ある性格をさらけ出していた。

そこで違和感に辿り着いた。
俊弥は、場の空気に合わせ振る舞うタイプだったはず。
だからTPO男なわけで……先日の飲み会のような、皆の雰囲気を悪くしてまで意見するなんてことは珍しい。

あれは、イレギュラー……?

今見せている完璧さは、一転して自分が沢山の仲間達のひとりに過ぎないのだと思い知らされたような感覚に陥った。

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