イケメンなんか大嫌い

「久しぶり」
「……いらっしゃい」

扉の向こうに立つ人を、同じように幾度となく迎え入れて来たはずなのに、どことなくぎこちなさを覚えた。
たった20日間顔を合わせなかっただけで、まるで初めて部屋へ招いた時のような緊張感と、他人行儀なよそよそしさが漂う。

仕事を終え、夕食の時間としてはやや遅めの8時半頃に現れた彼は、いつも通り穏やかな笑顔を携えており、わたしも微笑みを返した。
しかし何故だか、これまで会って来た人と別人のように、雰囲気が変わったような印象を受けた。

「わぁ、ビーフシチュー用意してくれたんだ。すごく嬉しい。仕事の後なのに、大変だったんじゃない?」

キッチンを覗き表情を綻ばせた彼に、これまで同様の空気が戻って来たように感じられ、ほっと息を付いた。

「昨日の内に作っておいたから平気だよ。すぐ用意するね」

ラグに座って貰うよう促し、料理を盛った皿をテーブルに並べる。
ワインを注いだグラスを合わせ、近況を報告しながらお酒を飲み食事を楽しむという、何度も繰り返した光景。

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