イケメンなんか大嫌い

「最近なんかバタバタしてて。ごめんね、なかなか連絡出来なくて。辞めた人が居てさ。工場長がすごい説得してたみたいだったんだけど」
「そうなんだ……大変だったんだね。ちゃんと休めてる?」

「うん、忙しいけど大丈夫。未麻ちゃんの顔見たら、やっぱり元気出たし。すごく美味しいよ、これ」

シチューを口に運びながら、いつもの可愛い満面の笑みを見せてくれた。
賢司くんのくれた言葉に、わたしも胸が暖かくなる。


なんだ、全然大丈夫だ……。あの漠然とした不安は何だったんだろう?

わたしの危機感などなかったかのように笑い合えていることに、安心する。
食事を終えベッドにもたれながらまったりと寄り添っていると、段々と言葉数が減って行く。
お互いの指を絡ませて、賢司くんの肩に重心を預けた。

……これが、幸せだったんだ。
良かった、ちゃんと思い出せて。

瞳を閉じて、暖かな体温を感じながら思い耽っていると、不意に静寂は破られた。


「……今日は、未麻ちゃんの本心を聞きたくて来たんだ」

耳に届いた思いもよらない言葉に、瞼を上げその場で反芻した。
ゆっくりと斜め上の賢司くんの顔を振り返る。
じっと前方を見据えていた視線が、そこで初めてこちらへと向けられた。

「未麻ちゃんと2年付き合って来たけど……」

その真剣な、冷静さを湛えた眼差しは、見たことがないと思った。
胸が早鐘を打ち、わたしの表情はきっと見る間に曇って行っただろう。
まるで知らない人のようなわたしの彼氏は、特に臆することもなく目線を合わせたまま続けた。

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