イケメンなんか大嫌い
俊弥が、いけしゃあしゃあと口にした。
「家近所みたいなんで」
「えっそうなの? 本当に?」
前園係長が目を瞬かせて、俊弥とわたしを交互に眺めた。
……何言ってんの、こいつ!?
隣の人を見上げながら、口があんぐりと開いてしまう。
妙な展開になりかけていることを察知し、慌てて止めに入った。
「違いますっ市川さんは……」
「僕この人と幼なじみなんで、大丈夫です」
俊弥は反論を遮り、背後からわたしの肩にぽんと手を掛けて爆弾を落とした。
「えぇっ!? ほんと?」
前園係長と西田さんが、ほとんど同時に驚きの声を上げる。
何てことをバラしてくれたんだー!
思わず顔を覆ったわたしを無視して、続ける。
「えぇ。久しぶりの再会なんで懐かしくて。僕達は地下鉄なんであちらに行きます」
満面の笑顔で大通りを指差した。
「そりゃあ、積もる話もあるよねぇ~。じゃあ、悪いけど市川くん頼んだよー」
「えっ! ちょっ待……」
わたしのすがる様な思いは届かず、皆すみやかに背を向けて歩いて行ってしまった。