熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
「そんなことより、ほら、彼が来た」
池山さんがこっちに向かって歩いてくる。
千紗が彼に向かって手を振っている。
「千紗、また彼に知らせたの?」
私は、聞こえないように彼女に耳打ちする。
「だって、一番心配してるのは池山さんだもの」
小走りで池山さんがやって来た。
「美夜、ごめん、せっかくのランチに割り込んじゃって」
彼のオフィスもこの界隈にある。
大手の商社だから、雑居ビルにつつましく入れてもらっている私の会社と違って、
デンと大きく目立つ自社ビルだけど。
「どうしたの?そんなに慌てて」
彼も、エリート商社マンだ。
レストランに入って来たら、入り口にいた女の子が振り返るほどの、スマートな甘いマスクのイケメンエリート。
「えっとね、美夜、また中東に転勤になったんだ。
だから、一番に君に話そうと思って。今度は、君と一緒に行こうと思ってる」
「中東?」
「うん。住むのはドバイになると思う」
「池山さん、積極的」千紗が口を挟む。
「もう、君を置いて行くわけにはいかない。ファイサルのことがあるから複雑だろうけど」
「もう、関係ない」そうだ。
もう、彼のことは待たない。
「そう言ってもらえると心強い。美夜。今日も早く帰るから。一緒に食事しよう」
今まで頑張って来たと思う。
好きな仕事について、毎日が充実してて。
それなのに、何だったんだろうなと思う。
ファイサルがいなくなっただけで。
彼に会うことはないんだっていうだけで。
それまで手に入れてきたものまで、どうでもよくなるなんて。