熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
私は、東京丸の内にある旅行会社に勤めている。

大学を卒業して、一度大手の旅行会社に入社した。

けれど、大手ではやりたいと思う仕事から、
だんだん遠ざかってしまって、悩んだ挙句、
ガイドの仕事に専念したくなって、
昨年今の会社に転職した。

今の会社、「おもてなしツアー社」は、
規模こそ大きくないけれど、
顧客の細かい注文に対応して評価を得て来た。

そうやって、不況の荒波を超えて来た。

私が所属するのは、
東京本部 外国人旅行部だ。
この会社に転職して、外国人向けの
インバウンドツアーを受け持つようになった。

私は、いったん家に帰り、
チャコールグレーのスーツに着替えて
地下鉄でオフィスに向かった。

オフィスに出社するのは二週間ぶり。
今日の予定は、
ツアー中に発生したお金の精算をして、
次のツアーの準備をする。

午前中に手際よく仕事を片づけたら、
元の職場の千紗を誘って丸の内ランチしよう。

次のツアーまで、少し時間がある。
けれど、ぼおっと時間を過ごしていては、
次につながらない。

私は、顧客が事務的に書かれた書類の中から、
書類に書かれていないこと、
顧客の好みなんかを調べる。

まずは、管理部の庶務課に行って
、領収書の束を事務のお姉さんに渡してくる。

お姉さんと言っても
推定40代後半、この会社の生き字引。

噂によると、会社の創業以来、
庶務課にいるシーラカンスと言われてる。


「オノミヤ、桜どうだった?」
シーラカンスがすっと音もなく近寄って来た。

怒らせたら、社長より怖い
お姉さまの岡本さんに、声をかけれられた。

「きれいだったよ。後で写真見せてあげるね」
領収書の束に漏れがないか、
もう一度チェックする。

「ん、ここでお昼食べるんでしょう?」
岡本さんがでっかい声で叫ぶ。

「えっと……予定入れるかも知れないから、
今日はパスします。ごめんなさい」

「彼氏?」
「いいえ。彼女」
「なあんだ。つまんないな」

「がっかりさせてすみません」
チェックを終えて、
岡本さんに領収書を手渡す。

入社以来恒例になってる、挨拶をすませた。
「また、後で」
私は岡本さんに手を振った。

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