熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~

岡本さんが、
椅子をころころと引っ張って来て、隣にやって来た。

コーヒーのマグカップも手にしている。
そして、いつの間にか
マカダミアナッツをつまんでいた。

「10時のおやつには、
まだ早いんじゃないんですか?」
「10時なんてすぐだよ。ほんの1時間じゃないの」
「はい」

「それよりさ、客が来てるよ。
お偉いさんが何人か来てね。
社長と本部長が呼ばれて会議室に入っていったよ」
岡本さんが、声を低くして耳打ちする。

「なんの会議?」
「さあね。私が知るわけがない」

「業績大丈夫なのかな?」

私がツアーの担当を外されたのも、
業績のせいかもしれない。
今年に入っても、
看板を下ろした旅行会社はいくつもある。

そんなはずない。

自分の受け持ったツアーは、
多くはないが収益を上げているはず。

ずっとそうしてきた。それなのに。
担当を変えられるなんて、それほど

「あっ、出て来た」
私は、すぐに丸っこい姿を探して
会議室に駆け寄った。

「本部長!」

と声をかけた本部長の横に、
でっかい浅黒い肌をした外国人がいた。

「美夜!!」

私の声は、彼の声にかき消されて、
本部長の前に飛び出る前に、
ひょいっと脇をつかまれて体を持ち上げられた。

子供が高い高いされるみたいに、
ぐいーっと体を持ち上げられた。

目の前に顔がある。堀の深い、太い眉毛の顔。

朝、「いってらっしゃい美夜」と言って、
これ以上ないという笑顔で送り出してくれた彼。



「ファイサル?ここで何してるの?」


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