熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~


「すげえな」
仲間の一人が、まるで人ごとのように言う。

「今年は勧誘、頑張らないと
いけないって池山先輩言ってたよ」
私は、感心してる場合じゃないと思って言う。

「なんで?」

「だって、うちのサークルって四年生が多いだろう?
その人たちが卒業したら、会の存続が危なんだって。
団体旅行の20人枠は死守しなきゃ」

鉄道オタクの孫田君が意気込んで言う。

「そうなの?」私は、20人という数字に反応した。

「どうする?」ちらっと隣のブースを見る孫田君。

今から、ポスター貼りまくるのも大変だし、
あんなふうに新入生の両腕に抱きつくのも
出来ればやりたくない。

「あんなの絶対ヤダ」
それは、3人とも同じだった。

気の弱そうな一年生の男の子が、
隣の派手サークルにまた一人、
客引きに連れられるように腕を取られて連れて行かれた。

「うん、鉄道模型でも置くか」

孫田君なんの疑いもなく言う。

「そうね。小さな子供なら来てくれるかも」
私はやる気なく答える。


わが、旅行同好会は総勢20人。

規模としては、こじんまりした方だ。

だったら、勧誘なんか
必要ないじゃんと思うのだが、
実は、新しく4年生になった先輩が7人もいる。
もし、彼らが運よく
単位を取って卒業してしまうと、
来年は7人抜けてしまうことになり、
途端に存続が危うくなってしまう。

だから、いつもより、
勧誘に熱を入れなければならなかった。

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