熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~


「お前ら、突っ立ってないで
前に出て声を掛けろよ」

横からいきなり声がして、驚いた。
3人ともピーンと背筋が伸びる。

「池山先輩?」
先輩が、配るビラを
大量に用意して持ってきて来てくれた。
本来なら、
ビラを用意するのも2年生の役目だった。

先輩に配った方がいいかも、
って昨日言われてたこと忘れてた。

「いつもなら、自分から来てくれる子だけで、
ビラなんか配らなくてもいいんだけどね」

3年の池山先輩が、
率先してコピーしたばかりのビラを配りながら言う。

先輩が見本を見せてるのに、
2年3人とも気後れしてビラを渡せないでいた。

イケメンの池山先輩が配るビラは、
新入生の女の子が、
8割がた受け取ってくれている。
女の子たちは、
ちらっと彼の顔を見て笑顔を向けられると、
すっと手を出す。

あるいは、
向こうから受け取りに来てくれてる子もいる。

みんな、ビラなんか見ないで受け取ってくれる。
中見に興味を持って受け取ってくれてる人は、
いるのだろうか?


私たち2年生はもっとひどい。

ビラを渡そうと新入生に近寄ると、
逃げられて受け取ってもらうまで行かない。

受け取ってもらっても、
適当にくちゃっとバッグの中にしまい込まれる。

「君たち、本当に、部員が20人割って
団体割引が聞かなくなっても知らないよ?」
池山先輩に背中を押される。

「ああ、池山さん、それ、すごく困ります」
孫田君が反応した。
「だろう?」
池山先輩が私たちの顔を見て言う。

サークルの運営は、
3年生と決まっているけれど、
資格試験や就活で忙しい。

なので、雑用のほとんどが
私たち2年生に回ってくる。
忙しいのに、
手伝ってくれる先輩の為にも頑張らなきゃ。

と、一瞬だけ思った。

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