熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
ファイサルが立ち止まったので、
今まで影のように後ろにいた
ムスタファもピタッと立ち止まった。

そうして、後ろにくっついていた
私と千紗も歩くのを止めた。

『お前は来なくていい。もう、休んでいいぞ』

ファイサルがムスタファに向かって言う。

彼らは、お互いに視線を合わせた。
そうすると、ムスタファは、
あっさり私たちを置いて行ってしまった。

『ちょっと、待ってよ。ファイサル、
美夜と二人だけで部屋に入る気?』

ドアを開けようとしたファイサルに、
千紗が待ったをかけた。

ファイサルは、私の背中に手を当てて、
部屋の中に誘導しようとしている。

そっか。
千紗にそう言われて、
初めて自分の状況が分かった。

私は、自分に迫っていた危機に
気が付いていなかったのだ。

ファイサルは、
私と二人でこの部屋に泊まろうというのか?

『大丈夫だ。本当に話をするだけだから』
私だけじゃなく、千紗にも言う。

『そんなの、信用できないわ』
千紗も負けてない。

『君に指図される覚えはない』
ファイサルは、もっと負けてない。

『ちょっと、そうはいかないでしょう?
相手は女の子よ』

千紗も頑張ってくれたけど、
ファイサルは意に介せず、
私をドアの向こうに押しやった。

『君は、ムスタファと一緒に
何か食べていろ』
千紗も、あっさり
黒服の男に抱えられて連れて行かれた。

私はファイサルに、
背中を押されて部屋の中に入れられる。
部屋には入らないって、
少し抵抗したんだけれど。

『言うことを聞かないと、
抱きかかえて部屋に入るよ』

耳元でささやかれて、
ドアをつかんでいる手をパッと離した。

バタンとドアが閉まり、
二人きりになってしまった。
どうしよう。話って何?

このまま遠い国に
連れて行こうなんて思ってないわよね。

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