レンタル彼氏–恋策–

 凜翔と初めてデートして、その後、望んでもないのに彼はしょっちゅう目の前に現れた。今こそそういう偶然を強く求めているのに、望む気持ちの大きさを反映しているかのように、都合のいい偶然は起こらなかった。

 会えない日々の数だけ、凜翔への想いは膨らんでいく。

 好き。会いたい。愛されたい。できることなら同じ想いを返してほしいーー。


 どうにもならない気持ちを持てあます一方、本音をかき消すように日常を送った。色のない時間が過ぎていく。


 優も、私と付き合ってる時、こんな気持ちだったのかな。繋がっているようで一方通行な恋。そんなの、つらいに決まってる。離れることを選んだ優は、正しい。

 だったら私も、凜翔のことは忘れるべきかもしれない。次はまともな恋愛をしたいから。

 頭では追ったらダメだと分かる。だけど、心は正直だった。凜翔に選んでもらった服を見るたび、好きの気持ちは縮むことなく膨らんでしまう。一緒に楽しく買い物や食事をしたこと、凜翔の表情、車の中で感じた優しい匂い、凜翔の手のぬくもり、全てが昨日のことのようによみがえる。

 だったらいっそ、凜翔のことを思い出してしまう服は全て捨ててしまおうかと思い、ゴミ箱に突っ込もうとしたけど、涙が出て無理だった。

「凜翔との唯一のつながりはこれしかないのに……。なくなるなんて、嫌……」

 昭を好きになった時以上に大きな想いだった。病むほど好きとはこういうことなんだと、今さらながら恋を知った瞬間だった。だけど、自覚したって報われない。

 自分で自分がやばいと思った。
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