愛され系男子のあざとい誘惑
「ここ54階のバーですよね。ここにシャワールームか何かがあるんですか?」


社長が押していたボタンは54階。確かにバーがあるし、お姉さんもいるかもしれないけれど、なぜバーなんだろう。私の言葉と表情が面白かったのか社長は声を上げて笑った。


「あはは、バーにシャワールーム?面白い発想だね。でも残念。ただ、今から行く場所は誰にも教えちゃいけないよ。優美ちゃんは聞いたことない?このビルには誰も行き方の知らないフロアがあるって」


「もしかして52階ですか?」


私の問いかけに社長はただ微笑むだけ。このB.C. square TOKYOには52階というフロアがない。いや正式に言えばないではなくて、誰も知らない。

クリーンスタッフの中の噂では、どうやら特別な行き方があり、そこの行き方はうちの上司ですら知らない。財閥の総裁が住んでいるだのどこかの国の石油王が住んでいるだの噂は広がるも真実は誰も知らない。



でも、まさか藤澤社長が52階に住んでいるの?
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