スパダリ副社長の溺愛がとまりません!
「広瀬さん、話を聞いてくれてありがとう」

萌さんは弱々しく、玄関の扉を開ける。ゆっくり歩く背中を見ていると、思わず声をかけていた。

「亮平さんに、萌さんが来たことを伝えておきますから」

すると彼女は振り向いて、小さく笑みを浮かべた。

「ありがとう」

ーー亮平さんが帰ってきたのは夜になってからで、会社でなにがあったのかは話してくれなかった。

だけど私には、萌さんが訪ねてきたことで頭がいっぱいで、さほど気にしていない。

そもそも彼の会社事情を、私が根掘り葉掘り聞く筋合いはないし。

「萌が、そんなことを言いに?」

萌さんが来たことを話すと、亮平さんはネクタイを外しながら、怪訝な顔をした。

「そうなんです。亮平さん、萌さんに会いに行ってあげてくれませんか?」

「え?」

こんなことを言う自分に驚くけれど、意に反した婚約を目前にして、亮平さんに会いたかった気持ちは理解できる。

それにーー。

「萌さん、亮平さんに会えれば、明日から前を向けると思います。そのためにも、会いに行ってあげてください」

「実和子……。いいのか?」
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