いつも、雨
「……そうですね。……どこか、わかりませんか?」

要人が問題集を覗き込んだ。


……そうじゃないし。

てか!

数学の問題より、結納のほうが、わたくしの人生の一大事なんですけど!?


カッとした領子は、身を乗り出した要人を正面から睨み付けた。


要人は驚いた顔をして……それから力なく笑った。

「やっと領子さまらしい顔、見られた。……ホッとした。このまま、おとなしく橘の千歳さまからの結納を受けるつもりなのかと心配になったやん。」

「……どういう意味?」


領子には、要人の意図がわからない。

要人に、領子の意志がどう変化したのかわからなかったのと同じように。


「そのまんまやけど。……領子さまは、どうしたい?」

「どうって……。」


領子は返答に詰まった。


要人は苦笑して、肩をすくめて見せた。



……わからないわ。

どういう意味なの?

その反応は、なに?

わたくしに呆れているの?

どうして?

わたくしが、迷っているから?


「……竹原は?どうしてほしいの?……わたくしは……どうすれば……」

結局領子は、要人に丸投げした。



要人は、ふーっと息をついた。

「俺の願いは、ずっと前から変わってへんけど。……領子さまには、誰よりも幸せになってほしい。そのためなら、俺は何でもする。」


「ずるいわ。そんなの……。」

領子はそう言って、ホロホロと涙をこぼした。



わかってる。

いつだってそうだったもの。

竹原は、わたくしに判断させるのよ……。

わたくしの人生だから、わたくしが決めろと……自分で責任を取れと……。

わかっているわ。


「ずるいかもな。……でも、俺はとっくに覚悟してる。」

要人の言葉に、領子は一抹の不安を感じた。


たとえ条例違反でも、駆け落ちすることになって……未成年略取で法律を犯しても……竹原は、わたくしのそばにいてくれようとするのかしら。

でも、お母さまに訴えられて、捕まったら、無理矢理引き離されてしまう。

……結果的に……一緒にいることはできない……。

そんな結末も含めて、覚悟しているということかしら……。


領子は、ぶるっと身震いすると、両手で自分の腕を抱いた。
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