いつも、雨
「……俺が死ねば、領子さまは、心おきなく、橘家に嫁ぐんですね?」


言ってて、笑えてきた。

要人は、鼻で笑って、それから吐き捨てるように言った。

「わかりました。死にましょう。」

「竹原!」

悲鳴のように領子は叫んだ。


要人は無表情のまま、唇に人差し指をつけた。


領子は、再び口を手で覆った。

そして、小声で言った。

「……冗談でも、やめて。そんなこと……望んでないわ。」

「冗談?……俺はいつも本気やけど?」

要人はまっすぐ領子を見て、そう言った。


嘘偽りのない言葉と瞳……。


「ごめんなさい。」

領子は、自分の失言を謝った。



でも、要人は謝罪の意味を深読みした。

……やはり、まだ15歳の中学生に、俺のために全てを捨てることなんかできるわけがない……か。


タイミングが悪かった。

それこそが「ご縁」であり「宿命」なのかもしれない。


「いや。俺のほうこそ、失礼しました。過分な夢を見せていただき、幸せでした。……これまで通り、領子さまのお幸せを、心から願っています。」

なるべく冷たくならないように、要人はゆっくりとそう言った。



領子は、驚いた顔で、要人を見ていた。


……何をおっしゃってるの?

言葉の意味がよくわからないわ。


わたくし……竹原を、失ったの?




茫然とする領子から、要人は目を背けた。



……せめて、もう少し長期的に物事を考えてくださらないと……今の領子さまでは、どうしようもない。

しかし……さすがというか……、まさか俺の「死」を願われるとは思わなかったな。

ふつうは「心中」じゃないか?

まあ、一緒に死んでくれと言われても……俺には領子さまを殺すことなんかできないだろうけど。


生きてほしい。

生きて、幸せになってほしい。

領子さまの幸せに、俺が不必要なら、身を引くまでのこと。

そんなこと、とっくの昔から……いや、最初から覚悟していたことだ。


いい夢を見させてもらった。

俺は、多分、一生分の幸せをもらえた。
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