いつも、雨
「ご一緒にケーキをお持ちしました。」

「ふーん?珍しいわね。……橘のおじさまが夕べ持ってきてくださったの?あら、美味しそう。ショコラ・オランジュ?」


供されたのは、領子の大好きなチョコレートとオレンジのケーキのようだ。


「いえいえ。これは、竹原さんが持って来てくださったんですわ。……私どもにも。……本当に、よく気の利く子でしたのに……これから淋しくなりますね。」


ねえやが要人の苗字を出しただけで、領子の心はざわめいた。

モヤモヤが広がり……その後の、ねえやの言葉をスルーしかけて……ちょっと、待って!?


「淋しくなるって、どういうことですの?」

手に取ったフォークを置いて、領子は首を傾げた。

単に、竹原が気を利かせて、ケーキを買ってきてくれただけじゃないの?


不思議そうな領子に、ねえやは少しためらって……それから、言葉を選んで言った。

「……奥さまから、お話しがあると思います。……私が申し上げるのは僭越なのですが……」


いや、むしろ、先にお伝えしておいたほうがいい。

ねえやは、何も言わないけれど、領子の要人への想いを当然知っていたし、他のご家族に気づかれないように立ち回ってすらいた。

幼子の憧れが、少女の淡い初恋に移行し、乙女らしい恋心に身を悶えさせているのを見守っていた。

……さすがに、2人の肉体関係までは目撃していないが、この数ヶ月で領子の身体が女性らしい変化を遂げたことに気づいていた。

おそらく2人は結ばれたのだろう。

……確信はないものの、ねえやは漠然とそう感じていた。



そんな矢先に、こんな風に……旦那さまがお亡くなりになって、橘の千歳さまとの結納が前倒しになるなんて……運命はむごい……。

おかわいそうな領子さま。

かわいそうな竹原さん。

でも、竹原さんは、天花寺家のために了簡して身を引いた。

その気持ちを無駄にしないように、領子さまは、奥さまからお話しをお聞きする前に心積もりをされていたほうがいい。

ちゃんと竹原さんへの感情を押し殺せるように……。

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