いつも、雨
「……原くんとは……幼なじみか何かですか?……元カレって雰囲気ではないようやけど。」

「小学校で同じクラスに何度かなりました。……友達と言いたいところですけど……原くんは迷惑でしょうねえ。」



むしろ原の情報収集のつもりだった。

しかし、佐那が原に恋愛感情を抱いていないことが、要人を浮き足立たせた。



「迷惑がられても、世話焼いてるんや。……佐那ちゃん、学生さん?何で、あの2人の面倒見てんの?」

「……去年亡くなった私の祖父が……保護司をしてたんです。私も知らなかったんですけど、原くんを担当したことがあったらしくて……2人は信頼関係を築いていたんでしょうねえ……先日、稲毛さんを撃った原くん、ヒトを殺したと思って怖くなったみたいで、祖父の番号に電話をかけてきたんです……泣きながら。原くんは、私の祖父が亡くなったことも知りませんでしたから、当然、私が祖父の電話を今使ってるとも思わず……祖父に罪を告白して、心から悔いてはりました。……とてもほっとけませんでした。」


淡々と、佐那は経緯を語った。


「なるほど。ボランティアですね、それは。……しかし、肝の据わったお嬢さんやな。……原くんは、井上さんの部下なの?」

要人の問いに、佐那は首を横に振った。

「組のことはよくわかりません。もう関係ないそうなので、それ以上聞いてません。でも、原くんは井上さんのことを叔父貴と呼び、荒井さんのことを兄貴と呼んでいました。井上さんと荒井さんの年はそう変わらないように思うんですけど……組織内の立場が違うのでしょうね。……荒井さんは、小指を1本失いました。井上さんは、原くんの分もあわせて、両手の小指を置いてきたそうです。」

佐那の目に涙が浮かんだ。


……確かに衝撃的すぎる話だ。

先ほどは気丈に手当てしてやっていたが……そりゃ、怖いよな……そんなバイオレンスな世界……。



要人は、ハンカチを佐那に差し出した。

佐那はぺこりと頭を下げて、受け取った。


……もちろん、自分のハンカチもあるけれど……ハンカチを借りることがとてもうれしかった。
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