いつも、雨
「じゃあ、二十歳過ぎた?酒、飲めるなら、今度一緒にどう?……本当は今夜と言いたいところやけど……」

さすがに急すぎるだろう。


しかし佐那は、一瞬キョトンとし、それからぶわっと頬を染めた。

「……うれしいです。私、お酒とか誘われたの初めてで……それも、竹原さんみたいな素敵なかたに……。……夢みたい。」


おぼこいなあ……。

要人の作り笑いが、苦笑に変わる。


「全然素敵じゃないけどな。俺。……腹黒い成金?……佐那ちゃん、サークルの飲み会とか行かへんの?」


佐那の通ってるのは女子大でも、入学式には他の大学の野郎どもがわんさか押しかけて、サークルに勧誘する。

美人じゃなくても、佐那は魅力的な女性だと思うのだが……。

ドジっ子かと思えば、気丈に元ヤクザの世話を焼き、ふわふわと浮世離れしたかわいらしさを見せる。


要人の疑問に、佐那は首を傾げた。

「行きます。……あ、でも、私……女子大のサークルで、顧問の先生も女性なので……その……男性と関わることがなくて……。」

「なるほど。もしかして、中学からずっと女子校?」


たしか原くんと小学校の同級生だと言っていたな。


「はい。……すみません、だから、こういうシチュエーションも初めてで……あの……どうすれば失礼じゃないのか……」


要人の苦笑が自然な笑顔に変わった。


……かわいすぎる。

駆け引きじゃなくて、本当に困っている佐那の反応が新鮮で、かわいくて……。


「礼儀とか気にしなくていいから。佐那ちゃんのしたいようにしてたらいいよ。……じゃあ、また、誘うな。」



要人の言葉に、佐那の顔が曇った。



……あれ?

何で、その表情?

うれしいけど、実際に日を改めて誘われるのは迷惑だったかな?


運転しながらなので、ずっと佐那の顔色をうかがうわけにもいかず……、要人は気になりつつも、それ以上返事を促さなかった。




だいぶ進んでから……佐那がぽつりと言った。

「今夜はダメですか?」

「へ?」


さすがに、驚いた。



佐那は頬も、目も、鼻の頭も真っ赤にしていた。

……泣いてる?

なんで?


わけがわからず、要人は道路脇に一旦、車を停めた。


「えーと……どうしたん?」

さっきまでとキャラが違う。

顔を覗き込むと、うつむいた瞳がゆらゆら揺れていた。
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