いつも、雨
喜びにうち震える佐那子を見て、要人はにっこり笑ってみせた。

「無理じゃないなら、O.K.?……ほな、そういうことで。後で電話して。明日でも明後日でも、佐那子ちゃんの都合のいい時間教えて。とりあえず、健全なデートしようか。」

「はいっ!講義サボります!風邪ひいても行きます!明日!」

無意識に佐那子はぴょんぴょん飛び跳ねていた……助手席で。


子供みたいな子やなあ……。

車がゆらゆら揺れるので多少気持ち悪くなった要人は、跳ねるのを止めさせようと、佐那子を抱き寄せた。


「きゃっ。」

小さな悲鳴が、要人を煽る。



キスしたら……どんな表情を見せるのだろう。


しばし悩んで、首筋に口づけるだけに留めた。

……多少の痕は残したけれど。





「お名前で呼んでいいですか?」

恐る恐る佐那子が尋ねた。


「どうぞ。敬語もやめていいよ。」

要人はにっこり微笑んでみせた。


すると佐那子は、うなずいてから……言った。

「じゃあ、要人さんも、私に無理やり笑顔を見せなくていいですから。疲れた時は、疲れたーって。不機嫌な時は八つ当たりしてもいいから。……本音で接してください。ね。」



まさか、そんなことを言われるとは思わなかった……。

要人は反応に困って……目を泳がせた。


くすっと、佐那子が笑った。

「……うん。そんな顔しててください。……やっと、要人さんをまっすぐ見られる気がします。」


なるほど。

佐那子は、頬を火照らしながらも、明らかにさっきまでと違う瞳をしていた。


衒いのない輝き。

愛と夢と希望が、きらきらと輝いているように思えた。


要人は、苦笑して……ふわりと佐那子を抱き寄せた。


……とても、直視できなかった。

自分にはない、純粋な、信じきっている視線に、同じように応えることができなくて……ずるいようだが、視線を避けるために抱きしめた。



佐那子は耳まで赤く染めていた。




「大学とか、家のこととか、……やるべきことを優先させてくれんと、誘いにくい。俺も仕事したいし。」


らしくない発言だった。
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