いつも、雨
「……昨日も思ったんですけど……要人さんの運転って、スムーズですね。発進も停止も、ガクッてならへんの。タクシーの運転手さんより上手いかも。」

走り出してすぐに、佐那子はそう言った。


鋭いな……。


「3年ほど、運転手を勤めたことがあってね。慎重さが身についてしまってるんやと思う。」

「ああ。それで。……今も、真面目ですよね。運転中。」


要人は、不思議そうに首を傾げた。

「……不真面目に運転したら、危ないやん。」


どこがツボだったのか、佐那子が笑った。

笑われても、不愉快にはならなかった。

むしろ、要人自身も笑えてきた。



……なるほど。

自分では気づかなかったけれど……確かに、俺にとって車の運転は、緊張を強いられる業務だったかもしれない。

それ以上に領子(えりこ)さまと2人きりになれることを悦んでいたからテンションが上がっていて……今の今まで、気づかなかったな。


……ふむ。



「……運転、プロに任せようかな。」


要人のつぶやきに、佐那子はうなずいた。


「そのほうがいいですよ。そしたら、要人さん、移動中にも紙のお仕事できますよ。……寝不足で運転しはるのも……心配……。」

「……もっと働け、ってこと?」


もちろんそんな風には捉えてない。

でも、何となくそうツッコんだ。


佐那子は一瞬キョトンとして、それから、ニッと笑った。

「そうですね。バリバリ働いてください。……でないと、私も、要人さんを誘いにくいですから。」


昨日の意趣返しのつもりらしい。


2人は弾けるように笑い合った。






ランチは、女子大生が喜びそうな、オシャレな一軒家レストランを予約した。

「お天気がいいので、お庭でも召し上がっていただけますが、いかがなさいますか?」

店のマダムの問いに、佐那子の目がキラキラと輝いた。


外がいいのかな?

エアコンもついてないし、季節的に、そろそろ虫も飛ぶだろうに……。

まあ、いいか。


「では、庭に準備していただけますか?」

佐那子は喜色満面だった。


テーブルマナーは、パーフェクトだった。

だが……料理より、イングリッシュガーデン風に自然にしつらえた庭の草木や花が気になるようだ。
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