いつも、雨
マダムも気づいたらしい。

「食後のお茶は、ワゴンで準備いたしますね。ごゆっくりどうぞ。」

そう言って、ペルシャ絨毯のようなシルクの敷物を芝生に敷いてセッティングしてくれた。



「素敵!ピクニックお茶会ね!」

キャッキャとはしゃぐ佐那子は、小さな子供のようだ。

美しい揃いのティーセットも、三段のケーキスタンドも、佐那子の琴線に触れるらしい。

頬を染め、雑草としか表現しようがない地味な小さな花に手を伸ばし、要人にほほえみ、鈴が転がるような声でたわいない話をする。


……天国で天使が遊んでいるようだな。


要人は何とも言えない心地よさを感じていた。


殺伐とした、数字と格闘するだけの生活……つきあいで、飲みたくもない酒を飲み、何の興味もわかない女を抱いたところで、苦い気持ちにしかなれない。


平日の真っ昼間に、さんさんと初夏の太陽を浴び、地べたに座って紅茶を飲む……今までの人生では一度も経験したことのない健康的というよりは乙女チックな状況に、こんなにも癒されるなんて思いも寄らなかった。


「悪くない。」

そう一人ごちてから、要人はゴロリと寝転んだ。


「……お昼寝?」

驚く佐那子がかわいくて……要人は、佐那子の膝に頭を乗っけた。

ひやっ……と、小さな悲鳴をあげたけれど、……佐那子はうれしそうに照れていた。


「いや……少しだけ……。」


瞼が、重い。

腹が膨れて、睡魔が襲ってきたらしい。


「……おやすみなさい。起こしてあげるから、安心してお昼寝してて。静かにしてますね。」

軽やかな楽しそうな声が心地いい。


「いや。話してて。佐那子ちゃんの話、聞いてたい……。」

「……ん……。風が気持ちいいね。……ここ、お花がいっぱい咲いてるから……いい香り。優しい香り。……うちはね、古い日本家屋で、お庭も毎月植木屋さんが手入れしてくださるから、雑草も引いてしまわはって……、こんなにかわいいお花もないんです。……香りといえば、梅やクチナシぐらいかしら……。」

佐那子の声を聞きながら、要人は本当に眠ってしまった。



すーすーと、音の出ない寝息が、かわいい……。

やだ。

私よりだいぶ年上の、社長さんをかわいいとか……失礼よね。


でも……かわいい……。
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