いつも、雨
長いまつげ。

鼻筋の通った中高な骨格。

綺麗な形の耳。


あら。

唇は、少し荒れてるかしら。


佐那子はそーっと手を伸ばし、ケーキスタンドの小皿の中の蜂蜜を人差し指で少しだけ掬い上げた。

そして、要人の唇にゆっくり塗った。

要人は、それでも起きなかった。


佐那子は指に残った蜂蜜を自分の唇にも塗り付けた。

最後に指を舐めてから気づいた。


これって、間接キス?

キャッ!


ジタバタしたいけど、要人を揺らすとかわいそうなので、じっとしていた。




そのうち、佐那子も眠くなってきた。

初夏の日差しと風が心地よすぎて……仕事をしていた要人と違って、佐那子の場合は単に興奮して眠れなかっただけなのだが……押し寄せる睡魔に逆らうことはできず……。


結局、要人の寝顔に覆い被さるように、佐那子も大きく屈んで眠ってしまった。







さわさわと、顔を撫でる不思議な感触……。

くすぐったくて目を開けた要人は、すぐ上に佐那子の寝顔がゆらゆら揺れていることに驚いた。

……寝てる……。

佐那子の髪が、風に揺られて、時折要人の頬を撫でていたようだ。

しかし、こんなに屈んで……背中とか腰とか痛くならないのかな。

てか、今、何時だ?

要人は、そーっと腕を上げて、時計を見た。

午後3時。

要人はともかく、佐那子の講義はもう始まってしまっている時間だ。

「佐那子ちゃん。3時。……大学……戻る?」

起き上がりながら、そう話しかける。


佐那子は慌てて顔を上げて、跳ね上がった。

「痛っ!いたたたた……。首が……痛い……。」


「あーあー。大丈夫?ここ?……あー、硬いわ。」

要人は、佐那子の首を後ろから軽く揉んだり撫でたりした。


「う……。ありがとうございます。……私まで寝ちゃって……ごめんなさい。」

「いや。謝らんでも。……講義、完全に遅刻になってしもたけど、戻る?」

「……無理。あきらめます。……でも、要人さんは、会社に戻らないと……。」

「うん。今夜は会食もあるし、戻るわ。……井上さんや原くんに、書類届けたかってんけど……明日にするかぁ。」

「私が届けましょうか?」

「え……。」

佐那子の申し出に、要人はためらいを覚えた。
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