いつも、雨
「あ。……お仕事関係?個人情報?……ごめんなさい、余計なこと言いました。」

すぐに佐那子は、そう謝った。


要人は頭をかいた。

「いや。そういうわけじゃないんやけど。……佐那子ちゃんを1人で行かせるんは……心配やな。」

「へ?」

何を心配されているのかわからずに、佐那子はキョトンとしていた。



……危機感なさすぎやなぁ。

要人はため息をついてから、佐那子の肩を抱き寄せた。

佐那子はキャッと小さな声を漏らして、要人の腕に倒れ込んだ。


「……手負いとは言え、暇を持て余したギラギラした野郎どもの巣くう家に、若いお嬢さんを送り込むわけにはいかんってこと。」

「……。」

佐那子の頬がみるみるうちに赤らんだ。


ようやく理解したらしい佐那子の頭を、要人はくしゃっと撫でた。


佐那子は慌てて頭頂部の髪を整えて、それから口を尖らせた。

「……要人さん、やらしい。そんなんじゃないのに……。今まで何度も行ってるけど、そんな……」


「今までは知らんけど、これからは、あかん。俺が心配やから。」

要人は佐那子の言葉を遮って、そう言った。


佐那子の口元がふにゃ~と緩んだ。


照れてる照れてる。

要人は目を細めて……佐那子にそっと口づけた。


……甘い……。

比喩じゃなくて、本当に甘い……。


寝てる間に唇に蜂蜜を塗られたことに気づかないまま……要人は不思議な気持ちで甘い唇に酔いしれた。




……キスしちゃった。

本当に、私……私たち……つきあってるんだ……。


正直なところ半信半疑だった佐那子は、ようやく実感し始め、舞い上がった。





佐那子の世界は一変した。

毎日必ず逢えるというわけではなかったけれど、逢えなかった時間の分だけ、より深く、強い想いを抱き合う。

自分のどこを要人が気に入っているのかは、やっぱりよくわからなかったけれど……疑いようのないほどに、大事にされていたから、自分を卑下するのは辞めた。

佐那子が、うれしいことをうれしいと、正直に表現する……ただそれだけのことに、要人は喜びを感じ、仕事のストレスを忘れることができた。





そうして、つきあい始めて1ヶ月後。

要人のマンションで、2人は結ばれた。
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