いつも、雨
要人は肩をすくめて見せた。

「……心配してるんだよ。あれでも。」


佐那子は不満そうに口を尖らせていたけれど、要人に視線で問われてることに気づき、慌てて言った。

「えーと、こんな夜中に突然来てしまって、ごめんなさい。……私、親に勘当されちゃいました」

「へ?」

要人の予想の斜め上をいく言葉だった。


「勘当って……え?……反対されて、喧嘩して、飛び出して来たって意味?」

常識的に順序立てて言ってみた。


でも佐那子は、苦笑した。

「いえ。ちゃんと話し合って、親子の縁を切ってきました。」


……なぜ、笑えるんだ?

親子の縁を切るって……そんな簡単な話じゃないだろう……。


要人は呆然と、佐那子を見ていた。



電子音が鳴った。

バスタブに湯が溜まったらしい。

「……とりあえず、お風呂。どうぞ。……ゆっくり温まっておいで。」

「はぁい。」

さすがに、一緒に入ってイチャイチャ……という状況ではなかった。



要人は先ほど佐那子を抱きしめて濡れてしまったパジャマを脱ぎ、ワイシャツに着替えた。


どうせあと数時間で出社する。

寝直す時間はないだろう。

でも、佐那子は少し休んだほうがいい。


要人は、まだ袖を通したことのない新しいパジャマを出し、タグを切って、バスタオルとともに脱衣所に置いた。




男物のぶかぶかのパジャマを着て、佐那子がリビングルームに戻ってきた。


要人のいれた珈琲を飲んで、ようやく人心地ついた。



「……何があったんや?」

おもむろに、要人が尋ねた。



「うん。今日、原くんから聞いて、私も初めて知ったんやけど、父が今期限りで議員を辞めることにしたらしくて……地盤を譲るヒトと私を結婚させようとしてたんです。既に、仲人さんを立てて、大まかな日取りまで決まってました。……それで、私には、つきあっている大好きなヒトがいるから父の決めた結婚はできないと言いました。」

そこまで言って、佐那子は珈琲を少し飲んだ。


「……ごめんなさい。要人さんに相談せず……勝手に要人さんの名前を出してしまいました。」

「いや。それはかまわんけど。……てゆーか、挨拶に行こうか?土下座でも何でもするけど。」

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