いつも、雨
足が……もつれそう……。

照明を落とした暗い廊下を進むと……あ……

竹原……。

やだ……。

……泣いちゃいそう……。


少し痩せたのか、疲れてるのか……やつれて……色気が……。

……反則。

どうして、こんなにかっこいいの。


これじゃ、わたくし……わたくし……。



「領子さま。」


要人の声が、領子の全身を貫いた。

身体中がカッと火照り、鼓動が激しくなる。


口から心臓が出てきそう……。


領子は、取り繕うこともできず……ただ立ち尽くして、要人に見とれた。


潤んでキラキラ輝く瞳も、紅潮した頬も、領子をまぶしいほどに輝かせた。




……綺麗だ……。

このヒトは……どこまで……。


要人もまた、領子の比類なき美貌が、恋に打ち震えて、より一層輝くことに舌を巻いた。




2人は、再び顔を合わせた、ただその一瞬で……かつてを凌ぐ強い恋心に捉えられてしまった。




「竹原……。わたくし……。」


言葉が出てこない。

視線をそらせない。

見つめ合うだけで、胸がいっぱいになる。



「……領子さま……。」


それは、要人も同じ。

押さえ込んでいた想いが溢れ出てしまいそうだ。



「ほら。お2人とも。急いでください。……私は先にやすませていただきますね。あまり遅くなりませんよう。竹原さん、お願いいたしますよ。」

キタさんは、そう言って、領子と要人の背中を文字通り、押し出した。


無情に玄関戸を閉められて、ようやく2人は歩き出した。



「……どうして……義姉の葬儀にいらっしゃいませんでしたの?」

口から出てきたのは、そんな言葉。


……お話ししたいことも、聞きたいことも、いっぱいあるのに……。


ついつい責めるようなことを言ってしまった自分の狭量に、領子は恥じ入った。



でも要人は、ふっと笑った。

領子らしくて……柄にもなく緊張していた心がほぐれた。

「すぐに駆け付けましたよ。……でも、私の不徳の致すところなのですが……恭風さまのご不興を買ってしまいましてね。……裏方でお手伝いさせていただいていました。」


「そうでしたの?お兄さまが竹原に怒ったの?……珍しいわね。……竹原に甘えて八つ当たりされたのかしら。」

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