いつも、雨
ホームに電車が滑りこんできた。

案の定、車内はかなり混み合っていた。


領子が押しつぶされないよう、要人は領子を戸の横のスペースに入れて、自分の両腕で囲い込むように庇った。

すぐに地下へ潜り込んだおかげで、雨脚の割にはずぶ濡れというわけではなかったが、それでも髪から滴がしたたっていた。

肩も濡れてしまっているようだが、こちらはすぐに乾きそうだ。


要人はおもむろにハンカチを出して、領子の髪を撫でるように拭った。


結果的に至近距離で見つめ合う形になってしまうと……もうダメだった……。

抑えても抑えても、心が溢れ出す。


好き……。

どうして……。

どうして……こんなにも……ときめいてしまうのだろう……。


独り相撲なら諦めもつく。

でも、笑ってしまうぐらい、2人の心が呼応している。

まるで鏡のようだ。


ダメなのに。

止めてほしいのに……。

見つめ合うと、確信してしまう。

この想いが一方通行ではないことを。





2駅めで電車を降りた。


要人は領子の腕を抱き寄せた。

抵抗することなく、領子はむしろ要人に身を寄せた。


……これ以上、意地を張ることは無意味に思えた。


2人は、今なお愛し合っている。

その事実の前に、もはや抗うことはできない。




階段を上がって地上に出た。

雨は止んでいるようだ。


「……御所を……少し、歩きましょうか……。」

要人の誘いに、領子はうなずいた。



まだ……離れたくない……。

もう少しだけ、一緒にいたい……。


そんな想いすら共鳴しあっていた。




夜の京都御苑は、広い砂利道を外れると不気味なほど暗い。

犬の散歩や、ジョギングするヒトも来ないような林へと入った。


「……ココは、全く変わりませんね。昔のままだ。」


ベンチすらない林の中。

丘のように少し盛り土したところへ上がり、大きな木の根を椅子代わりに座った。


「本当ね。……でも、ヤブ蚊が来そう……。」

領子は要人の腕にもたれてそうつぶやいた。

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