いつも、雨
要人は、息をついた。
「……わかりました。」
ニコッと、領子は微笑んだ。
そして微笑みをキープしたまま、恐ろしいことを言った。
「では、お願いしますね。……ふふ、わたくし、地獄に堕ちるわね。」
冗談めかしていても、領子は本気で覚悟している。
……こうと決めたら頑固なんだよな……このおかたは。
要人は苦笑した。
「お供しますよ。地獄でも、煉獄でも。……領子さまが望まれるなら、心中も厭(いと)いません。」
「あら。でも、わたくし、まだ死にたくないわ。せっかく竹原にまた逢う約束ができるんですもの。……これでもう、つらいことがあっても、竹原に逢う日を指折り数えれば、我慢できるわ。」
……つらいこと……。
具体的に、何かお困りしていることがあるのだろうか。
ご夫婦仲は……本当は、うまくいっていないのだろうか……。
それ以外の、俺にできることなら、解決してさしあげたいのだが……。
……出過ぎたことだろうか……。
要人は返答に迷って、領子を抱きしめた。
領子はそれ以上、何も言わなかった。
無視できない蚊の羽音が、2人の時間を終わらせた。
すっかり雲が切れて、夏の星たちが光っていた。
領子は、要人から少し離れて、前を歩いた。
……本当は、手を繋ぎたいけれど……誰かに見られてしまったら、厄介だ。
これからのことを考えると、用心深くならざるを得ない。
領子は前方を睨み付けたまま、毅然と言った。
「連絡先は聞かないわ。」
「……わかりました。こちらには、いつまでいらっしゃいますか?」
強がる領子がいじらしくて……帰したくはなかった。
「どうかしら。まだ決めてないの。……そうだわ。お兄さまが、近いうちに、東京に戻られるそうよ。」
「……そう……ですか……。」
要人は天を仰いだ。
そちらも、放置しておくことはできないだろう。
少なくとも、ご機嫌を直していただかないと、今後の支援をしてさし上げにくくなってしまう。
「わかりました。数日中に、ご機嫌伺いに参ります。」
「ええ。そうしてさしあげて。……できたら、わたくしが京都に居るうちに、いらしてね。」
振り返って、笑顔でそう言うと、領子は少し足を速めた。
……まるで少女のように素直なおねだりに……要人の胸はときめいた。
「……わかりました。」
ニコッと、領子は微笑んだ。
そして微笑みをキープしたまま、恐ろしいことを言った。
「では、お願いしますね。……ふふ、わたくし、地獄に堕ちるわね。」
冗談めかしていても、領子は本気で覚悟している。
……こうと決めたら頑固なんだよな……このおかたは。
要人は苦笑した。
「お供しますよ。地獄でも、煉獄でも。……領子さまが望まれるなら、心中も厭(いと)いません。」
「あら。でも、わたくし、まだ死にたくないわ。せっかく竹原にまた逢う約束ができるんですもの。……これでもう、つらいことがあっても、竹原に逢う日を指折り数えれば、我慢できるわ。」
……つらいこと……。
具体的に、何かお困りしていることがあるのだろうか。
ご夫婦仲は……本当は、うまくいっていないのだろうか……。
それ以外の、俺にできることなら、解決してさしあげたいのだが……。
……出過ぎたことだろうか……。
要人は返答に迷って、領子を抱きしめた。
領子はそれ以上、何も言わなかった。
無視できない蚊の羽音が、2人の時間を終わらせた。
すっかり雲が切れて、夏の星たちが光っていた。
領子は、要人から少し離れて、前を歩いた。
……本当は、手を繋ぎたいけれど……誰かに見られてしまったら、厄介だ。
これからのことを考えると、用心深くならざるを得ない。
領子は前方を睨み付けたまま、毅然と言った。
「連絡先は聞かないわ。」
「……わかりました。こちらには、いつまでいらっしゃいますか?」
強がる領子がいじらしくて……帰したくはなかった。
「どうかしら。まだ決めてないの。……そうだわ。お兄さまが、近いうちに、東京に戻られるそうよ。」
「……そう……ですか……。」
要人は天を仰いだ。
そちらも、放置しておくことはできないだろう。
少なくとも、ご機嫌を直していただかないと、今後の支援をしてさし上げにくくなってしまう。
「わかりました。数日中に、ご機嫌伺いに参ります。」
「ええ。そうしてさしあげて。……できたら、わたくしが京都に居るうちに、いらしてね。」
振り返って、笑顔でそう言うと、領子は少し足を速めた。
……まるで少女のように素直なおねだりに……要人の胸はときめいた。