いつも、雨
2週間後、領子は再び病院で診察を受けた。

現在、妊娠7週間。

今日は、お腹の赤ちゃんの心拍確認のために、エコー検査を受けるという。


受付を済ませて産婦人科病棟の廊下で診察の順番を待つ……はずが、事務の女性が出てきて応接室に案内された。

ドアを開けると、要人がソファに深く腰掛けて書類を眺めていた。



「……やっぱり、いらしたの。」

何の約束もしなかった。

けど、たぶん来るだろうと思っていたわ。


「おはようございます。」

要人は、わざわざ立ち上がって、一礼して、そう挨拶した。


「ごきげんよう。」

領子がどこに座るか逡巡していると、

「失礼します。……どうぞ。お時間になるまで、こちらでお待ちください。」

と、事務の女性がお茶を入れてから出て行った。



領子は要人の正面に渋々座った。


「……お身体、おつらくはないですか?」

要人は、心配そうにそう尋ねた。


「問題ありませんわ。念の為に外出も取りやめて、自宅でのんびりしていますので。……今のところ、悪阻もありません。」


まるで問診だな。

苦笑して、要人は立ち上がり……領子のすぐ隣に座り直した。


そして横からそっと抱き寄せた。



「……心配で気が気でありませんでした。お出かけしてくださらないので、様子がわからず……無駄足も踏みました。……電話はしないお約束でしたが……苦しいものですね。」

「……。」


重い。

これがリップサービスなら、いっそ気が楽なのに。


領子はそっと要人の胸に頬を押し付けて、目を閉じた。


いつからだろうか……。

要人は領子を守るため……そして、領子の様子を探るために、日常的にこっそり護衛を付けた。

最初は気づかなかったが、駅前でナンパしてきた男から逃がしてくれた体格のいい男性を、視界の端に見つけることが増えて……事情を察した。

彼以外にも、橘家に出入しているヒトの中にも、要人に領子の情報を流している者がいるようだ。



……でなきゃ、約束なしに、月に何度もわたくしの外出先で待ちぶせしていることなんてできないもの。

まるでストーカーね……。

プライバシーも何もあったものじゃない。


でも、領子は嫌な気持ちにはならなかった。

むしろ、……うれしいとすら思っていた。

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