いつも、雨
けど、忙しい身だろうに、無駄足を踏ませてしまったとなると……さすがに、申し訳なさすぎる。

「連絡してくれたらいいのに。……直接は無理でも……いらっしゃるんでしょう?わたくしのすぐそばに……あなたの手の者が。……何人も。」


「おや、バレていましたか。」

悪びれずに、要人は認めた。


「わたくしがどれだけぼんやりしていても、そりゃあわかりますよ。……何人いらっしゃるかは存じ上げませんけど。」

そう言ってから、領子は要人の胸から身を起こした。

「……わたくしは、大丈夫よ。安心して。……お腹の子は、わたくしが守りますから。」

キッパリとそう言った領子は、既に母親の顔をしていた。

要人は、息をついた。

「頼もしい……ですね。いささか淋しい気もしますが。」

「ふふ。わたくしも、淋しいわよ。でも、仕方ありませんもの。……お互い様。」

「……意地悪おっしゃらないでください。」


つらそうな眉間に、領子はそっと指を這わせた。


「意地悪じゃありませんわ。……淋しくても、竹原もわたくしを想ってくださっていると信じているから……どんなに離れていても、同じ想いを抱いているって信じているから、耐えられるんだもの。……これっきりじゃないでしょう?また逢いにいらしてくださるでしょう?」


要人は領子の手を捉えて、恭しく口づけた。

「……来ます。無理にでも時間を作って、参ります。」


領子はうなずいてから、苦笑して見せた。

「……竹原が無理してくださってるのはわかるから、わたくしも無理しますけどね……本当は、次に逢える日と時間を予め決めてくださったほうが……楽ですのよ?……毎回、突然なんだから……」


イロイロと準備をして万全の状態で愛する男に抱かれたい。

そんな女心を吐露してみたけれど、要人は一笑に付して領子を再び抱きしめた。




診察はすぐに終わった。

お腹の中で、赤ちゃんは元気に息づいてくれていた。

ホッとしたら、涙が出てきた。


次の診察までに母子手帳をもらってくるようにと指示された。



本当なら診察まで2時間近く、会計でも30分は待たされるはずなのに、どこまでも領子は特別待遇らしい。

あっという間に終わってしまった。
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