いつも、雨
「あまり無理なさらないでね。」


本当は毎日でも逢いたいくせに、要人を気遣う領子がいじらしく、愛しかった。

「領子さまとお逢いすることを我慢するほうが、俺にとっては『無理』ですよ。」


しゅるっと、音をたててネクタイをゆるめて、はずす……。



やっぱり、かっこいい……。

竹原ももう、31歳?

昔はなかった威厳と、大人の男の余裕のような色気が出てきた気がするわ。


領子はうっとりと見とれて……それから、ふふっと小さく笑った。


竹原は、小さな頃から、かっこよかったわ。

わたくしが物心ついたときには、小学生だったけれど、お兄さまと同い年とは思えないほど素敵で頼もしくて優しかったわ。

今みたいにお金持ちじゃなくても、いつもわたくしにお花をくれて……。



「お花をプレゼントしてくださらない?」

突然、領子がそんなことを言い出した。


既に臨戦態勢だった要人は、一瞬、動きを止めたが……再び全身で領子に愛を伝えるべく動き出した。


「……珍しいですね。リクエストとは。……わかりました。ご希望のお花はありますか?」


組み敷いた領子の瞳が潤み、嫣然と微笑んだ。


「いいえ。竹原に選んでほしいの……なんでもいいわ。」

「……わかりました。ではのちほど。確かこのホテルのアーケードには名の知れた花屋が入っていましたね。……自宅にお持ち帰りされますか?」

「ええ。ですから、あまり大き過ぎる花束は、やめてくださいね。」


要人は返事のかわりに、そっと口づけた。



優しい優しい時間。

かつてと確かに違う、優しい行為。

ずっとお姫さま扱いされてきたけれど……それとはまた違うみたい。


変わったのは、私?

それとも、竹原?


どうして、こんなにも優しくて、愛しくて、幸せなのだろう。


2人で抱き合い、ぴたりと重なる。

それだけで恍惚として、満たされる。


幸せ……。

この時間が、本当に幸せ。


珍しく、領子はそのまま寝入ってしまった。


安らかな寝顔が愛しい。


要人はしばらく見とれたけれど……領子の帰宅時間を考えると、このまま眠らせてあげるわけにはいかない。


いや……少しなら……。


そーっとそーっと領子を起こさないように、要人はベッドを抜け出した。

手早く服を着ると、静かに部屋を抜け出した。
< 231 / 666 >

この作品をシェア

pagetop