いつも、雨
花屋は人通りのある1階にあった。

色とりどりの花。


思えば、20年間、いろんな花を領子さまに捧げてきたけれど……最近は、ご無沙汰だったな。

どんな花も領子さまの美しさには敵わない。


本気で要人はそう思っていた。


領子以上に整った美女がどれほどたくさんいても、要人の目には映らない。

恋は盲目とはよく言ったものだ。


要人は、咲き乱れる花々に領子を重ねて……結局、どの花もふさわしくないとため息をついた。


……そうしてようやく選んだのは、まだ蕾のかたそうなユリ。

鮮やかな緑の葉と、強い意志を感じさせるツンと顔を上げた蕾。


もうすぐ清廉な白い花が咲くだろう。

派手さはないのに、誰よりも目を惹き、周囲に溶け込むことはない……匂い立つ美しいユリの花。


店員は、同じ蕾でも、ユリではなくカサブランカを要人に勧めた。

しかし領子にはカサブランカの派手さはない。

要人は頑として譲らず、ユリの蕾だけで花束を作らせた。

余計な飾りや引き立て役は不要だ。


シンプルな本当にシンプルな花束を大事そうに抱えて、要人は部屋に戻った。


領子はまだ眠っていた。


もう少し見ていたい……。

だが、さすがに、タイムリミットかな。


要人はユリを傍らに置いて、領子のまぶたにそっと口づけた。


「……ん……。」

領子の目が開く。


……ほら。

目を閉じていても美しいが……こうして俺を見てくださると、さらに輝かれる。


要人は感嘆して、もう一度、領子の頬に唇を寄せた。


「……時間?」

領子にそう問われて、要人は残念そうに頷いた。

そうして起き上がろうとする領子を支えるように、抱き起こした。

露わになった白い乳房がなまめかしくて……。


「どうぞ。」

要人は領子にユリの蕾の花束を渡した。


領子は驚いた顔で、花束と要人を交互に見た。

「……ありがとう。でも、どうして?」


要人がどんな花を選ぶか、領子は楽しみにしていた。

花言葉まで熟知している要人のこと……マイナーな草花を選ぶかもしれない。

いや、やはり大輪の薔薇だろうか。

色は?

昔はわたくしに、淡いピンクを選んでくれたけど……色濃くなったかしら?


想像すると楽しかった。


ユリの花も、予想していた。

凛としたユリは、領子ももちろん好きな花だし、要人から何度ももらったこともあった。


ユリのモチーフのアクセサリーや浴衣、着物もあったわ。

でもそれは、とても数え切れないほどのたくさんの贈り物の一部。

特別にユリに執着しているようには思えなかった。
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