いつも、雨
「では、わたくしは、これで。」

頭を下げる要人を見ていたくなくて、領子はすっくと立ち上がった。

慌てて、要人は領子を見上げた。

しかし領子は要人に一瞥もせず……スタスタとドアのほうへと歩いて行く。



……これで……何だ!?

これで、もう、終わりにする気か!?

領子さまっ!



要人は領子の腕を捉えた。

しかし、領子は、何の躊躇もなく、腕を振りほどいた。


「痛いじゃない。」

領子の双眸が、要人を睨み付けた。


……ゾクゾクした。

たまらない……。


そうやって、いつだって俺には、剥き出しの感情をぶつけてほしい。


涙でも、怒りでもいい。

俺から……心を隠さないでくれ。




要人は、初めて、領子の意志に背いた。


「竹原!?何するの!はなしなさい!はなしてっ!……いやっ……」

領子の両の手首を捕まえた。

顔を背けられないよう、そのまま壁に押し付けた。

そして、強引にキスした。


しばらく、ジタバタともがいていたが……次第に領子の身体から力が抜けた。

それでもくやしそうに、領子は要人を睨み付けていた。



……舌や唇に歯をたてられないだけマシだが……。



要人は、領子の強さに舌を巻いた。



それでも泣かないのか……。



「はなしませんよ。絶対に。今、領子さまをこのまま帰したら……俺は一生後悔する……。」

「……。」

領子は、何も言わなかった。

いや、言えなかった。

荒い息をしているところを見ると、要人のキスが激しすぎて、思うように呼吸できなかったらしい。


要人は、肩で息をしている領子を強引に抱き上げると、ベッドに転がすように横たわらせた。

慌てて身体を起こそうとする領子の両肩を捉えて、ベッドに押し付けた。

「諦めてください。逃しませんから。」

ぽたぽたと、領子の顔に要人の涙が降り注ぐ。



……そんな顔されたら……邪険にできないわ……。



領子は息をついた。

「わかったから、少し力を緩めてくださらない?……手首も、ほら、真っ赤。……肩も、痛いわ。」


要人は、慌てて領子の肩から手を離した。

すかさず、領子は起き上がろうとした。


しかし要人は領子の袂(たもと)を膝で踏みつけていた。

領子は、再び勢いよくベッドに仰臥した。
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