いつも、雨
結婚してから3年以上が経過したが、佐那子の愛情は、感心するほど変わらない。

うれしくもあり……申し訳なくもあり……最近では負い目のほうが大きい。


すべて、俺が悪い。

まったく、情けない。



「心配かけて、すまない。」

うれしそうにしがみついてくる妻を邪険にはできない。


要人は、そっと背中に手を回して、ぐいと抱き寄せ……顔を見られないようにした。






翌朝、普段出勤する日と同じ時間に、秘書の原が要人を迎えに来た。

いつも通り、荒井の運転で出勤……するふりを演出してくれた。


佐那子の笑顔を忸怩たる想いで見て見ぬ振りしていた原は、助手席からミラー越しに要人を睨んでいた。

それでも原は、駅で要人に指示された手土産各種を手渡す時には、無理して微笑を貼り付けていた。


「お帰りの新幹線に乗られたら、また、ご連絡ください。迎えに参ります。行ってらっしゃいませ。お気を付けて。」

「……ああ。頼む。ありがとう。」

いらない、とはとても言えなかった。






東京には昼前に到着した。

迎えに来た江連から報告を聞きながらランチを食べた。


天花寺家には13時半に到着した。

ちょうど恭匡が幼稚園から帰って来るのとかち合った。


「あ!」

恭匡は、顔を輝かせて要人に駆け寄った。


「こんにちは。恭匡さま。お帰りなさい。……お土産がありますよ。後で、お父さまからもらってください。」

「ありがとう!なぁに?お菓子?京都のお菓子だよね?」


まだ子供なのに、恭匡は、和菓子、それも、決して甘過ぎることのない和三盆の和菓子が好きだ。

東京の和菓子や洋菓子は口に合わないらしく、要人や、父の恭風が持ち帰る京都のお菓子にやたらこだわる。


言葉はすっかり標準語に戻ったというのに、嗜好は変わらないものだ。


「ええ。道喜さんで見つくろって来ました。」


要人の言葉に、恭匡はぴょんぴょんと飛び上がって喜んだ。


……これだけ思いっきり喜びを表現してくれたら、さし上げるほうも楽しいものだ。


ニコニコする要人に、恭匡は尋ねた。

「おばちゃまにもお土産、ある?」


ドキッとした。
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