いつも、雨
「お気に召したなら、どうぞ。……しかし、領子さまには、いささか武骨ですかね。……ふさわしいものを、選びましょう。」

「いいえ。これがいいわ。竹原の手に馴染んできたものでしょう?……これを、ください。」

キッパリそう言ってから、領子は思い出したように笑った。

「そういえば、初めて竹原がわたくしにくださった万年筆は、わたくし、上手く使いこなせなくて……すぐにペン先を傷めてしまったのよね。……また、壊しちゃうかしら。」

「……そうだったんですか?知らなかったな。……もし、まだ捨ててらっしゃらないなら、私に預けていただけませんか?修理を依頼してみましょう。」


領子はちょっと口を尖らせた。

「捨てるわけないじゃない。ひどい。……ちょっと待ってて。取って参りますわ。…………あ……。」

急に立ち上がってドアに駆け寄ろうとした領子は、脳貧血らしく、ふらついて、へなへなと座り込んでしまった。


「……どう見ても、まだ体力が戻ってらっしゃるとは思えませんよ。どうか、無理なさらないでください。」

やれやれ。

要人は領子の側にひざまずき、難なく領子を抱き上げた。


領子はぐったりしたまま……甘えるように要人の首に腕を回した。

「うれしい……。もう少しだけ、このまま……こうしていて……。」


潤む瞳がかわいくて……。

欲しがる唇に、要人は強く深く口づけた。


もっと、もっと……。


何度キスしても、領子は唇を突き出しておねだりした。



「……これ以上は、ココでは無理ですよ。」

身体をもじもじさせ始めた領子に、要人はそう釘を刺した。


「わかってます。だから帰るの。……また、来てくれるでしょう?ゆっくり2人で過ごしたいわ。」

領子は素直に要人に甘えて、そうおねだりした。


要人は目を細めて、うなずいた。




……また原が怒るな……。

優秀な秘書が、そのうち、自分を見限ってしまうのではないかと、多少不安にかられながら。









翌日、領子は橘家に帰った。

「あら~。領子さん、まだずいぶんとやつれてらっしゃるわよ。……もっとゆっくりしてらしてもよかったのに……。」

姑は、百合子を抱っこして上機嫌だった。
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