いつも、雨
「長らくお留守にして申し訳ありませんでした。……百合子のことも、ありがとうございました。これからは、わたくしが……」

「ダメよ!……無理なさらないで。領子さんは、まずはお身体を元に戻さないと。いくら何でも痩せすぎですわ。栄養価の高いお料理をたくさん食べて、しっかり休んで。ね?」

領子の言葉を勢い良く遮ってしまってから、姑は優しい言葉を並べた。



……ありがたいけれど……何か……。


違和感を覚えたが、領子は

「ありがとうございます。」

と、手をついてお礼を言った。





夜、帰宅した舅と夫は、普通に領子の帰宅を喜んでくれた。

特に夫は、領子の留守の間、やはり何かと不自由だったらしい。

「元気になるまで、百合子の世話は母に任せて、君は今まで通りでいいよ。……朝、ネクタイを選んでくれるだけでも、助かるから。」


……夫なりの優しさなのだろうが……。

不器用なヒトだということは、充分よくわかっている。

にしても、他に言いようがあるだろうに。


領子は、釈然としないながらも、小さくお礼を言った。





しばらくは、上げ膳据え膳で、日長一日寝そべっていたが、充分に身体に体力が戻ってくると、領子は百合子のお世話をしようと試みた。

しかし、姑が四六時中つきっきり。


……もしかして、わたくし……娘を姑にとられちゃったのかしら。

でも、お義母さま、うれしそうだし……飽きられるまでは、このままお任せしていたほうが穏便なのかしら。


百合子は日に日に愛らしく、かわいらしく成長している。

姑は目に入れても痛くないと本気で思っているらしい。


……橘の血を引いてないとお知りになったら……ショックで寝込んでしまわれるかもしれない……。


罪悪感も、娘を奪われた淋しさも、領子にとっては紗幕がかかっているかのように、薄ぼんやりしていた。


ハッキリくっきりしているのは、竹原への思慕……。


いつやってくるかわからない要人と確実に共に過ごすため、領子は外出を増やした。

これまで通りの習い事や社交のつきあいのみならず、ボランティアにも関与し始めた。

姑の気乗りしない会合の代役を頼まれることも多くなったが、むしろ領子は進んで引き受けた。

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