いつも、雨
領子の言う通りだ。

指示系統は1つでいい。

ナンバー2も作らない。


「ええ。株式上場もいたしません。……誰にも文句は言わせません。」


要人が不敵な笑みを浮かべたのを、領子は不思議な気持ちで見つめていた。


領子自身は、経済情勢に詳しいほうではない。

それでも、いろんなところで要人の会社の噂を耳にすることが増えた。

いい噂ばかりではないし、新興会社のくせに傲慢だと叩かれているのも聞いたことがある。

しかし領子は、要人を信じていた。

かつての領子がお願いした通り、要人は橘家に負けない存在になるべく躍進している。


……まあ、当初の計画通り、子供達を結婚させるというわけにはいかないけれど……。

古代なら、腹違いの兄妹は結婚できたけれど……まあ、これから先、法律が改定されることはないでしょうね。



「社屋はどちらに建設されますの?」


領子の問いに、要人は茶目っ気たっぷりにウィンクして見せた。


「領子さまのご自宅のすぐ近くですよ。領子さまのお部屋の窓から、俺の部屋の窓が見えるように建てます。」

「……本当?……なんだか……今まで以上に、監視されちゃうみたいね。」

くすくすと笑って、領子はそう言った。


要人は、微笑で誤魔化した。



とっくに、領子の日常は把握している。

行く先々に情報網が張り巡らしてある。

……だから、こうして、寸暇を惜しんで逢えるんだ。


我ながら、偏執的だと思う。



結婚する時、佐那子のことを本気で愛しいと思った。

いや、もちろん、今も佐那子のことは好きだし、感謝している。


しかし、領子さまへの想いの前には、……為す術もない……。

どれほど、佐那子が大事でも、自分の全てを捨てられるのは領子さまだけだった。



……子供ができたら、また、気持ちが変わると思っていた。

少なくとも、自分の血を分けた存在だ。

本能的に愛せると思っていた。


確かに、息子も、生まれたばかりの娘も、かわいい。

父として、2人の幸せを心から願う気持ちになっている。


だが、そこまでだった。



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