いつも、雨
俺は、肉親の愛情を、ほとんど知らないからなのか?


両親を早くに亡くし、親戚の家で育った要人には、親子の絆や愛情を実感する機会がなかった。

周囲の友人や知人の親子関係を見る限り、うらやましくも、煩わしくも、……気持ち悪くすら感じていた。


親子だから愛してる?

親子だから許せる?

……甘え以外のナニモノでもないな。


なるほど、親子とは、利害関係なしに甘え合える存在ということか。


いや。

本来はそうではないのではなかろうか?

親は子を養い、子は親に従う。

この基本形が互いに甘え合うことで、崩れていく。


俺は、子供達にどう接すればいいのだろうか。



要人にとっては、会社の運営よりも難解な問題だ。

2人めが生まれても、やはり接し方がよくわからない。


幼い義人が、妹にデレデレして、一生懸命世話を焼いているのを見る度に、自分との温度差を感じる。


それは、そのまま、佐那子と俺の温度差なのかもしれない……。


かつては、佐那子と一緒に居るだけで、俺自身も温かい気持ちになれた。

だが、今は……。




要人は、腕の中の領子を見つめて、優しく髪を撫でた。

いつもは白い頬が、紅潮している。



俺は、妻よりも、血を分けた子供達よりも、このかたが大事だ。

やはり、どこか欠陥しているのだろうな。

……でも、このかたは……そうではあるまい。

今は、娘の百合子を姑に奪われてしまっているから、俺にこうして依存してらっしゃるが……。


ふっ……と、要人は自嘲した。

領子が不思議そうに首を傾げた。


「……いや。我ながら、おかしいのですが……俺は、百合子さまにまで嫉妬しているようです。」

要人は正直にそう言った。


すると、領子もゆらりと変な嗤いを浮かべた。

「まあ……。そんな必要ないのに。……わたくし、百合子の中に、竹原の面影を探すことが……幸せなの。母親のくせに、娘自身よりも、竹原を見つめているのよ。」


要人の胸に喜びが広がった。


領子にとっては苦悩だろうが……要人は、ぎゅっと領子を抱き寄せた。


「……地獄に墜ちるわ……。」

低い声で領子がつぶやいた。


何度も何度も、繰り返してきたその言葉は、もはや免罪符かもしれない。


「……どこまでも、お供します。」

いつも通り、心からそう答えた。
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