いつも、雨
4年が過ぎた。

誰もが見とれるほど愛くるしく、美しく、百合子は育っている。

姑は百合子の美貌が誇らしくて仕方ないらしく、片時も離さず、可愛がっていた。

そのせいで、まだ小さな娘が、口とプライドだけは姑そっくりなことを、領子は憂いていた。



「幼稚園に入れば、社会性も身につきますよ。」

要人は楽観的にそう慰めてくれた。


領子も、なるべく早く幼稚園に入れようとしたが、姑が頑固に抵抗した。

三年保育のための準備をしていた領子に対し、姑はむしろ一年保育でいいと主張した。

姑が懇意にしている友人が、有名な幼稚園の役員をつとめている縁で便宜をはかってもらうつもりだったらしい。

結局、願書を出すことも許されず、領子の揃えた書類はすべて無駄になってしまった。


しかし、姑の思い通りにもならなかった。

家長の橘千秋氏は、嫁姑の確執を知ってか知らずか……勝手に、孫の幼稚園を決めてしまった。

いや、戦前から、橘家の子供たちがみんな通っていた幼稚園なので、千秋氏のみならず、父親の千歳もまた、それが当たり前だと思っていたようだ。



「願書出してきたから。」

夫に、さらりとそう言われて、領子は驚いた。

「……え……あの……お義母さまは……反対されませんでしたか?」


恐る恐るそう尋ねると、夫の千歳は事も無げに言った。

「ああ、母が何を言おうと関係ないよ。父も、俺も、かほりも、……君も、恭風さんも通ったんだ。百合子だって当然そうすべきだろ。6歳になったら、習い事も始めないとな。」


……自由なようで自由ではない。

決められた枠の中からはみ出さないように、きっちりと押し込まれ、矯正される。


百合子はまだ女の子だから、通う学校と、習い事ぐらいしか決まってはいない。

しかしもし男の子なら……千歳のように、社会的な自由は全くなくなってしまうのだろう。


かほりさまのように、特別な才能があれば、話は別だろうが……今のワガママであまったれな百合子には、美貌以外なんの取り柄もない。
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