いつも、雨
「そうですか。……ありがとうございます。わたくしは、お義母さまのおっしゃることに背くことはできませんでしたが……百合子はなるべく早くに社会生活を経験したほうがいいと思っていました」


領子がお礼を言うと、千歳は鼻白んだ。

「君が従順過ぎるから、母も百合子も、つけあがるんだよ。……たぶん、幼稚園や習い事の送り迎えにも母がくっついて行きたがるだろうけど、甘やかしすぎるからな。……忙しいだろうけど、君がしろよ。」


「……はい。わかりました。」


もちろん、娘の付き添いは、うれしい。

でも、要人との時間の妨げになるかもしれない……。


こんな時でも、領子は要人を想って愁えた。



お受験のための教室には通わなかったが、あっさりと百合子は合格した。

色々な力が働いたのだろうか。


暢気に合格を祝っていた家族の中で……当主の千秋氏だけが……鬱々としていた。


千秋氏は、旧知の学園理事から、合格の吉報と、思いがけない報告を受けた。

願書に記入した血液型と、健康診断の結果のデータ上の血液型が一致しないという知らせだった。

合否が覆るような問題では、もちろんない。

単に、書き間違えただけだろうが……という親切心からの連絡ではあったが……その血液型は、有り得ないものだった……。


愕然とした。

何かの間違いだと思いたかった。

目に入れても痛くない自慢のかわいい孫が……息子の血を分けていないなどと……信じたくはなかった。



千秋は、嫁の領子を詰問することもできなかった。

嫁のことは、気に入っている。

幼い頃からよくよく知っているが、社会的に非の打ち所のない立派な貴婦人だ。


……息子にもよく尽くしてくれていると思っていたのだが……これは、いったいどう考えればいいのだろう。



とにかく、知ってしまったからには、このままにしておくわけにもいかないだろう。


千秋は、まずはこっそりと、DNA鑑定をしてもらった。

その結果、孫の百合子と嫁の領子との親子関係はほぼ確定されたが……百合子と息子の千歳との親子関係は……確定するには至らなかった。

ややこしいことに、代々何度も婚姻を繰り返してきた家同士のことなので、完全に他人だと言い切れる程に低くもない。

しかし、親子ではない可能性のほうが高いのは否めない。



千秋は、ますます困ってしまった。


もし万が一、領子に何の罪科もなかったなら……大切な嫁を傷つけてしまう。


どうすればいいのだろう。


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