いつも、雨
「……ありがとうございます。でも、そんなことできません。……わたくしは、再婚も、妾宅に囲われることもありません。……どうか、百合子と一緒に……追い出してください……。」


領子の願いを千秋は認めなかった。

「ダメだ。君の自由を奪うことは、実際にはできないかもしれない。しかし、裁判を起こしても、百合子は橘家で育てる。」


千秋の頑なさが領子には理解できなかった。

「……あの子は……橘家の血を引いていませんのに……どうして……。」


領子の問いに、千秋は悲しそうな顔になった。


「さあ。どうしてだろうね。……私はね、領子さん。本当は、少し前から知っていたんだよ。君が、千歳以外の男の子供を産んだことをね。」


ぎゅっと、心臓を鷲づかみにされたような気がした。


……そんな……


「いつから……ご存じでしたか……。」


もしや、既に相手が竹原であることも、ご存じなのかしら。

領子は、喉の乾きを覚えて……目の前のお水に口を付けた。


「百合子の入園の時にね。……願書と診断書の血液型が一致してなかったんだよ。」

「診断書……。」

さっと領子の顔色が変わった。


……そうだわ。

迂闊だった。

わたくし……どうして、そこまで考えが及ばなかったのかしら……。

いいえ。

あの時、珍しく千歳さまが、役所を回って書類を作ってくださったのよね。

……その時に……病院にも行っていたの……。


悪いことは、隠しきれないものなのね……。


「どうして、今まで何も仰らなかったのですか?……もし、今日……こちらで、お逢いいたしませんでしたら……お義父さまは、いつまで……何もご存じないふりをされていたのですか?」


領子の問いに、千秋は苦笑した。

「……いや、これでも随分悩んだんだよ。申し訳ないが、勝手にDNA検査もさせてもらった。君の不貞も、百合子が孫ではないことも、わかった上で……それでも、君たちは私の大切な家族だという結論に至った。」


舅の言葉に、領子の涙腺が決壊した。

「わたくしも……わたくしも……」

言葉が続かない。


……後悔はしない。

でも……わたくし、大切なお義父さまを……傷つけてしまった……。


ごめんなさい……。

本当に、ごめんなさい……。
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