いつも、雨
翌日の夜、要人は家族と秘書の原とともに、佐那子の父親の通夜が執り行われる会場を訪ねた。

一般会葬の受付に向かったが、すぐに後援会のヒトらしき女性が飛んできて、控え室へと案内された。


親戚だけの控え室のはずだったが、そこに集う人々の佐那子への態度は、まさしく腫れ物に触るようによそよそしく、言葉少ない。

何となく居たたまれない空気は、子供たちにも伝わってしまう。

義人は妹の由未の手を握り、大人達の好奇心の目から庇うように立っていた。



奥から、黒い着物を身につけた女性がやってきた。


……一目でわかった。

佐那子の母親だ。


要人は、パイプ椅子から立ち上がると、黙って深々と頭を下げた。

義人と由未も、慌てて真似をして見せた。


佐那子は、涙をボロボロと流しながら、実の母親に謝った。

「申し訳ありません。……来てしまいました。ご挨拶だけしたら、すぐに失礼いたしますので、末席で手を合わせることをお許しください。」


他人行儀な言葉が痛々しくて、要人は頭を下げたまま、思わず目を閉じた。


佐那子の母は、毅然としていた。

「あまり人目につきませんように、ご焼香されたら帰ってくださいね。」

冷たい言葉だった。


それまで、さざなみのように親族の声が絶えなかった控え室が、一瞬、やけにシーンと静まりかえった。


佐那子はハンカチで涙を押さえながら、子供達の背中を押して、退出しようとした。



「お義母さま、それではあまりにも……。せっかく佐那お嬢さまが来てくれはりましたのに。……どうぞ、こちらにいらしてください。」

奥から毅然とした女性が出てきた。


まるで客室乗務員のような、鼻につくイイ女っぷりに、佐那子は圧倒され、要人は嫌悪感を覚えた。



「ご無沙汰してます。日向子(ひなこ)さん……。」

佐那子はもごもごとそう挨拶した。


……この女も親戚か?

しかし、佐那子の母親を「おかあさま」と呼んだということは?

養子に入った跡継ぎ議員の嫁ということか……。
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