いつも、雨
「日向子さん。それでは、示しがつきません。とっくに縁を切った人間を親戚扱いしたら、あきません。」
佐那子の母親はそう言ったが、日向子と呼ばれた女は相当強いらしい。
「……むしろ、ちょうどよかったですわ。佐那お嬢さまに、改めて署名捺印をいただく必要があると、主人も言うてました。……ねえ、佐那お嬢さま。明日の葬儀にも、来てくれはりませんか?それまでに、こちらで書類を作っておきますんで、サインしてください。認印でけっこうですので。」
堂々とした日向子に対して、佐那子は不安そうに母親と、要人を順に見た。
要人は姿勢を正して、佐那子の背中に手を回した。
「……僭越ながら、お伺いします。はじめまして。私は佐那子の夫です。……失礼ですが、書類とおっしゃるのは……何の書類ですか?」
如何にもイケメンな、できる男!を具現化したような要人の容姿に、先ほどまで偉そうだった日向子の態度がコロッと変わった。
「まあ!まあまあ!ご挨拶が遅れて、申し訳ありません!やだもう!佐那お嬢さんてば!面食いやったんですねー!駆け落ち相手がこんなハンサムさんやったなんて!……主人がフラれるわけやわぁ。」
佐那子はムッとしたように唇を引き結び、日向子をじとーっと見ていた。
どう見ても仲が良さそうに見えない2人の態度に、母親は口を挟めないようだ。
要人は、質問に答えなかった日向子に、ますます心証を悪くした。
よくある話だろうと推測して尋ねてみた。
「ご謙遜を。……奥さまのご主人も、貫禄があって、ご立派でいらっしゃることはよくよく存じておりますよ。……書類というのは、相続放棄の申し立てですか?それとも、遺産放棄でよろしいのですか?」
日向子は、その2つに異なる意味があることを知らなかった。
迂闊なことは言えなくなってしまった。
悔し紛れに、日向子は佐那子を睨み付けた。
「……詳しいことは、主人か、うちの弁護士に聞いてください。でも今さら、権利、主張せんといてくださいねえ。私とこ夫婦が、亡くなられたお父さまの跡継ぎですから。……逃げ出した佐那お嬢さんには、びた一文、分けません。慰留分を主張しはるんやったら、葬儀費用も出してからゆーてくださいねえ。」
佐那子の身体がぶるぶると震えている。
要人は、支えるように、佐那子の両腕を力強く掴んだ。
佐那子の母親はそう言ったが、日向子と呼ばれた女は相当強いらしい。
「……むしろ、ちょうどよかったですわ。佐那お嬢さまに、改めて署名捺印をいただく必要があると、主人も言うてました。……ねえ、佐那お嬢さま。明日の葬儀にも、来てくれはりませんか?それまでに、こちらで書類を作っておきますんで、サインしてください。認印でけっこうですので。」
堂々とした日向子に対して、佐那子は不安そうに母親と、要人を順に見た。
要人は姿勢を正して、佐那子の背中に手を回した。
「……僭越ながら、お伺いします。はじめまして。私は佐那子の夫です。……失礼ですが、書類とおっしゃるのは……何の書類ですか?」
如何にもイケメンな、できる男!を具現化したような要人の容姿に、先ほどまで偉そうだった日向子の態度がコロッと変わった。
「まあ!まあまあ!ご挨拶が遅れて、申し訳ありません!やだもう!佐那お嬢さんてば!面食いやったんですねー!駆け落ち相手がこんなハンサムさんやったなんて!……主人がフラれるわけやわぁ。」
佐那子はムッとしたように唇を引き結び、日向子をじとーっと見ていた。
どう見ても仲が良さそうに見えない2人の態度に、母親は口を挟めないようだ。
要人は、質問に答えなかった日向子に、ますます心証を悪くした。
よくある話だろうと推測して尋ねてみた。
「ご謙遜を。……奥さまのご主人も、貫禄があって、ご立派でいらっしゃることはよくよく存じておりますよ。……書類というのは、相続放棄の申し立てですか?それとも、遺産放棄でよろしいのですか?」
日向子は、その2つに異なる意味があることを知らなかった。
迂闊なことは言えなくなってしまった。
悔し紛れに、日向子は佐那子を睨み付けた。
「……詳しいことは、主人か、うちの弁護士に聞いてください。でも今さら、権利、主張せんといてくださいねえ。私とこ夫婦が、亡くなられたお父さまの跡継ぎですから。……逃げ出した佐那お嬢さんには、びた一文、分けません。慰留分を主張しはるんやったら、葬儀費用も出してからゆーてくださいねえ。」
佐那子の身体がぶるぶると震えている。
要人は、支えるように、佐那子の両腕を力強く掴んだ。