いつも、雨
通夜が終わると、早々に立ち去るつもりだった。
しかし、喪主が慌てて飛んで来た。
……どこかの会合で、要人を見知っていたか……あるいは、芳名帳で名前を見て、やっと気づいたのだろう。
佐那子の夫が、今をときめく新興グループ会社の代表だということに。
「社長!?お待ちください、社長!竹原社長!」
不安そうな佐那子の肩を抱いたまま、要人は喪主に慇懃無礼に答えた。
「鶏冠井先生。この度は、ご愁傷様でございました。……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。竹原と申します。……その節は、私のために、佐那子が先生に多大なご迷惑をおかけしたと聞いています。……でも結果的に正解でしたかな。才色兼備な奥さまで、政治家の嫁としては、佐那子よりはるかにふさわしいとお見受けいたしました。」
もちろん嫌味だ。
鶏冠井議員は、色を失って恐縮したが、このまま義人を帰すわけにはいかないとばかりに、必死で引き留めた。
「や。もう。その話は……。ねえ、佐那子さん。亡くなった大先生も……大奥さまも、何もおっしゃらないので、まさか、佐那子さんが竹原社長とご結婚されてたなんて……驚きました。どうか、これからは、親戚として、懇意に……」
「鶏冠井の家とは絶縁いたしました。……母が許さないと思います。それに、日向子さんにも、今さら私に気を遣わせるのは、気ずつないですから。」
佐那子は、キッパリそう言った。
……よくはわからないが……佐那子は鶏冠井の家そのものというより、跡を継いだこの鶏冠井議員と日向子夫人に対して、わだかまりがあるらしい。
要人は、佐那子の気持ちを尊重することにした。
「先生。子供達も小さいので、今夜はこれで失礼いたします。明日また家族でうかがいますので、また、その時に。……ああ、お席は今日と同じ、一般席でけっこうですよ。先生の奥さまのご希望通り、妻は、こちらのお家の一切の相続放棄の申し立てをいたしますので、ご安心ください。」
暗に、今さら親戚付き合いなんかする気はない……と、伝えた。
しかし、喪主が慌てて飛んで来た。
……どこかの会合で、要人を見知っていたか……あるいは、芳名帳で名前を見て、やっと気づいたのだろう。
佐那子の夫が、今をときめく新興グループ会社の代表だということに。
「社長!?お待ちください、社長!竹原社長!」
不安そうな佐那子の肩を抱いたまま、要人は喪主に慇懃無礼に答えた。
「鶏冠井先生。この度は、ご愁傷様でございました。……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。竹原と申します。……その節は、私のために、佐那子が先生に多大なご迷惑をおかけしたと聞いています。……でも結果的に正解でしたかな。才色兼備な奥さまで、政治家の嫁としては、佐那子よりはるかにふさわしいとお見受けいたしました。」
もちろん嫌味だ。
鶏冠井議員は、色を失って恐縮したが、このまま義人を帰すわけにはいかないとばかりに、必死で引き留めた。
「や。もう。その話は……。ねえ、佐那子さん。亡くなった大先生も……大奥さまも、何もおっしゃらないので、まさか、佐那子さんが竹原社長とご結婚されてたなんて……驚きました。どうか、これからは、親戚として、懇意に……」
「鶏冠井の家とは絶縁いたしました。……母が許さないと思います。それに、日向子さんにも、今さら私に気を遣わせるのは、気ずつないですから。」
佐那子は、キッパリそう言った。
……よくはわからないが……佐那子は鶏冠井の家そのものというより、跡を継いだこの鶏冠井議員と日向子夫人に対して、わだかまりがあるらしい。
要人は、佐那子の気持ちを尊重することにした。
「先生。子供達も小さいので、今夜はこれで失礼いたします。明日また家族でうかがいますので、また、その時に。……ああ、お席は今日と同じ、一般席でけっこうですよ。先生の奥さまのご希望通り、妻は、こちらのお家の一切の相続放棄の申し立てをいたしますので、ご安心ください。」
暗に、今さら親戚付き合いなんかする気はない……と、伝えた。